好きだとか愛しているとか誰かに言ってしまいたい。
気持ちよくなって気持ちよくなって、その搾りかすみたいに好きだと、愛していると言いたい。
昨日バイト中にふと携帯を見たら普段全く連絡を取らない同級生の男の子から電話がきていた。
携帯のキーボードが日本語になっていなくて面倒だったので「what」と、これだけ送った。
バイトが終わってまた携帯を見ると訳のわからない英文が2つ送られてきたので、無視して着替える。
あさひやダイゴと飲んでいるのだろうと思って放っておいたら、また電話がかってきた。
もしもし、と電話に出るとしばらく返事はなくてガヤガヤした周りの音しか聞こえない。
もしもーしーどーしたーと言うと、返事が返ってきた。
「もしもし!あっ!覚えていますか?!」
いつも気だるそうなその同級生の声ではなくて、もっと元気なかわいい声だった。
この前やった卒展でわたしのことを見かけて電話をしてくれたらしい。
それから少し話して同級生に電話を変わった。
今飲んでて、この前の展示でえりこのことかわいいって言ってて。なんかごめんねと謝られた。
謝らなくてもいいのにね、バイトで疲れていたから元気が出た。
それからまた最初の男の子に代わって、「今度会おうよ!あ!すいません!会いましょうよ!」
と言うので、いいですよーと返事をすると
「え!?ほんとですか!?まさか良いって言ってもらえると思ってなかったのでびっくりしてます…」
その男の子はやたらと謝ったり本当ですか!?と何度も聞いてくるので変な人だなあと思った。
わざわざ勇気を出して電話をしてくれて一緒にご飯を食べに行こうと言ってくれて、断る理由はない。
性格が悪そうだったり、変なとんがった靴を履いていない限り、嬉しいことだ。
男の子は喜んでいたのでわたしも嬉しくなった。
「連絡先を聞くので、また連絡します!」
と言うと電話は切れてしまった。
なんだか春だなあ〜と思いながら電車に乗っていると、少し不安になってきた。
あの男の子はわたしの見た目をかわいいといってくれたらしいけど、初対面の人はわたしの何を良いと思ってくれたのか気になる。
自分の性格や人への想いの入れ方に自信がない。
別に不安になる程でもないし、世間に向かう姿勢としては自信がある。自信があるというより自信を持っていなければ潰れてしまいそうになる。
しかし誰か、人と向かい合うときにその態度を貫いて良いのかまだわからない。
別に好きになってもらいたいというわけではなくてただ、毎日の中の面白そうなことを増やしたかったのでわたしは誘いをオーケーしたからそこまで考える必要はなかった。
でもやっぱり好意を向けてくれる人と遊ぶときはどうしたら良いかわからない。
女の子だったらベタベタすれば良いしエスコートすれば良い。
男の子はそうはいかない。
男の子にもそういう素直な態度をとりたいけれどそれはやっぱりちょっといけないことらしい。
人によってはそうやって素直に接しても良いような男の子はいる。
ただたのしいことが性別を越えたことだけになってしまうのがこわい。
こわくはないかな、もったいない。
もう誰かと関わっていったりそういうことをはじめるのにめんどくさくもなりたくないし、悲しいのも辛いのも疲れるのも嫌だ。
ただ、わたしはその男の子からの誘いをとてもうれしく思っているしなんだか映画のようでおもしろい。
こういうことに運命を感じたりする。