久しぶりに都心に出た。すれ違う人はみんなスーツ、白と黒のコントラストがザクザク歩いて来た。
お店の店員さんは自分はこの店に関係ないですという顔をしていてすごく嫌だった。全然知らない人が関わって来るだけで大変だったりするのにその人たちがだらりとした姿勢で口元も緩く開けていたらもう嫌で嫌で仕方なかった。お客さんもみな、とりあえずとか時間を潰すという理由でしかコーヒーを飲まないし、ご飯を食べていない。みんな本当はこんなとこ居たくない、あー働きたくないって顔してそこにいる。本屋さんに入ってもナオコーラの本はないし、プロレスの雑誌も見当たらなかった。
なんだか恐ろしくなってしまって、カフェへ逃げ込んでもそこは憩う場所ではなく、クーラーの効きすぎた店内では効率を考えられ順番を前後した接客がされる。
アイスですか、ホットですか。
あ、すいません、アイスで。
前のサラリーマンがブレンドコーヒーを受け取るより前にわたしの飲み物用意される。なんだかもうこの人には一生会わないみたいな、奇跡すら信じていないみたいな姿勢でホイと手渡された。小さな氷がたくさん入ったアイスカフェラテ。ペーパーナプキンが底にペタッと張り付いている。絶妙にスペースをとってしまう、普段はいらないなと思うトレーもなんだか恋しくなる。座る席を探しに店内を偵察。まるでこの世に存在してないみたいなお客さんたち。奥ばった喫煙席は人ひとりひとりの絶望を蒸発させた空気で煙たく。もうどこにも座りたくなかったのにとりあえず席を見つけ飲み物を飲みほした。それからすぐ店を出たらお腹まで痛くなってきて色々な感情を通り越し悲しくなって来た。たまらずいもうとに電話をしたら気分が晴れたので電車に乗ってバイト先に向かった。
今日はとても忙しく頭が回らなくなってしまったくらい!
一息ついて結んでいた髪をほどけば嗅ぎ慣れない甘ったるい匂いがしてくる。昨日は外泊していたので彼のシャンプーを借りた。自分から甘い匂いがするのも何もかも、そのズレというかなんだかもういろいろ可笑しくてその心地の差をクスッと笑って、遠くにぶん投げた。
恋愛だから許されると思ってるところは人によって違うし、相手によっても変わる。
距離やスタイルに慣れていく時間や方法が人間関係には必要だし、その全てを習得するスピードは人によって違う。
この歳に身につけた習慣というのは他人の手でカチャカチャ組み替えられるものではない。劣等感や負けず嫌いの加減もそうだ。
わたしにだって計り知れない劣等感と負けず嫌いさが人と同じ、いやその五億倍くらいあるけどそれは所構わず発動させるものではない。きちんと成立している人間関係にそんなものは必要ないから。ただその負けず嫌いや劣等感にわたしは勝てる。自分以外のすべてのものをよく見つめ愛していれば、愛させていただけるのならクソな意地はしゅわりと消えていく。支配されぬよう理解し、それからシャンと向き合えばきっと大丈夫。人は皆弱々だ。みんなでヨワヨワになろう。
新しいストーリーや新キャラがぽっと出て来てはなくなり、思い出や登場人物だけが古くなっていく。
人生はいつでも等身大で嘘をつかない。いつまでたってもわからないものです。生きるということのたのしさは。