ちょっと前までとても過ごしやすい気候だった。
とは言っても、家の中ではあったか靴下を履き、暖房をつけていたし、働けば汗をかいた。帰って羽毛の布団と毛布をかけて寝ていた。
加湿器と空気清浄機が一緒になったものの湿度を示す温度を眺めて、水を足したりしていたけれどまだ冬じゃなかった。
夏との間に金木犀の匂いがあって、それからゆっくり、冬を迎えにいくような秋だった。
しかーし!みんな冬だ冬だと言っていた。
わたしは全部に反論した。
気持ちを傾ける暇がなかったからとか、終わって忘れてしまったことを「無かった。」と言い切ってしまうのは寂しいことだと思う。
冬の朝のみずみずしさ、葉がなくなった木の一生懸命さにわたしは胸を打たれる。
大袈裟なくらい着膨れする通気性のいい服ばかりを着て、短い靴下とズボンの間から入る冷たい空気に目を覚まして今日も終わっていく。
まだまだだ。冬はまだまだだ。