目が覚めてケータイの電源を入れると、わたしの人生史上最も魅力のない男から電話があったようだった。5時39分に。
1年くらい前からしつこく連絡をよこしてきたのだけど、その度に会う気はないと言い続けてきた。しばらくすると連絡も来なくなりさりげなーく消えていくんだなと思っていたのに。そんな朝方に電話をよこすとはね。まーったく気がつかなかったし全然意味がわからないのでそのままにしておいた。
怒りっていうのは外に出て行って攻撃を仕掛け形なくなるまでライフルで相手を打ち抜きまくるのと、生まれた怒りが外に出て行かずに内へ戻ってきて内爆発する2つ、今思いつく限りでは2つある。
わたし自身は後者の方が多いと思う。怒りを相手にぶつけるのはわかる。こう言う理由であなたに怒らされました、ということ(まあそれもあんまり言いたくない。察せとも思う。自分にもいつだって原因があると思え、と思う。わたしはもう今年は、しばらくの間は察さないと決めた。いつもいつも気がついているけど、あなたがしてほしいようにはしてやらないぞと思う。わたしのことも察してくれない相手にわたしのスキルを還元してやる謂れはない。)。でもその怒りで相手を攻撃するのは全然違う。もちろん攻撃したいこともあるそれは稀。攻撃しても何も始まらないし、怒り合っても仕方がないことらしい。なんとなくそう思うのは今まで怒り合ってきた人たちを見ていたからかもしれないし、自分がそこにいたのかもしれない。
お前は傷付けてないと思ってても相手は傷ついてるんだぞ!っていう意見もなんだか聞こえてきましたがそれと同じようにわたしも傷ついたり悩んだりしていることも、一つ頭に入れておいてほしい。人は皆全然違っているけど、あまり変わらない。
わたしは嫌なことがあると声を大にしてきついことを言ってしまうが、べーつにそれを引きずったりしない。外に吐き出してさらさらと流されていく。忘れる訳ではないけれども、綺麗に棚に入れておく。上の方に、見えないようにでもちょっとだけ見えるように。
「誤解されやすいよねえりちゃんは。ああいうことを言うけど、別に怒っている訳ではなくてどうにかしたいって思っちゃうんだよね。そこがすごいところだよ!」
と、バイト先のみずほちゃんって言うすてきなお姉さんに言われたのを、棚から取り出しては蓋を開けそのキラキラをしばらく見つめてまた元の場所に戻す。
今は取り出しやすいように見えるところに置いておいてるそれも、いずれは必要なくなる時も来るんだろうなと思った。そうしたらまた別の場所に上手にしまおう。
そうやって人からたくさんのすてきな気持ちをもらい、嫌なことはレベルアップに欠かせないというネガティブすぎて明るい思考を身につけることでたくさんのすてきなものに出会えていると思う。
だからこそ純度高くキラキラと光るものに心惹かれるし、そうでないもののこともよくわかる。とりあえずと言うことは大体わかる。こうだって示されているレールに終点まで乗るつもりはない。わたしにはわたしのスタイルがあって、それは誰にも邪魔することはできないし、そこを愛して、そしてその差異をたのしまないとノ〜ノ〜ノ〜、ダメダメダメなのだ。
人生における、ひとさじの練乳をティースプーンにすくいさらさらと振りかける。舌にねっとりと絡む甘みを目を閉じて感じる。甘さの形がまぶたの裏にするすると形を作っていく。目をつむったまま見つめるのだ。
こうしている間にもワールドカップでは日本がシュートを入れ、はなちゃんはタバコを一本吸い終わる。私の知らない誰かはもうどこか知らないところで眠っているし、あなたは暗い部屋で明るく照らされこれを読んでいるかもしれない。明るくなった朝の布団や電車でこれを読んでいるかもしれない。
できるだけ多くの人のことを考えてみたい。
ただそれはとても自分勝手なことなのかもとも思うけどね。